2009年頃暇を持て余し経済小説を読む
高杉良の作品を初めて読んだのは、自分が大学生の頃でした。
ちょうどこの頃(2009年前後)って、ハゲタカやチェイスという土曜ドラマなんかが流行ってて、「経済」とか「経営」、「会計」なんかを題材にした映像作品が多かった印象があります。
そんな当時の流行りみたいなのもあって、ブックオフで100円で売ってる経済小説を読んでたわけです。
で、高杉良の作品となると数が多いからか100円で色んな作品が置いてたんです。
だから、高杉良。
何故、高杉良なのかと言われれば、ブックオフに100円で色んな作品が売られれていたから、となります。
で、初めて読んだ欲望産業というのは、経済小説というよりかは、人間ドラマでした。この作品が人間ドラマというよりかは、高杉良の作風が人間ドラマなんですよね。
真山仁の小説になると、経済小説感が濃いストーリーだと思うのですが、それと比べると経済小説という枠であるかどうかも怪しいくらい高杉良は人間ドラマです。でも、描かれた物語を振り返るとリアリティが凄いわけです。
例えば、この欲望産業は昔隆盛を極めた消費者金融業の雄「武富士」を扱った作品なのですが、厳しい契約ノルマゆえに、契約数、貸付金額は膨大化していくものの、結局は回収が見込めない不良債権となることが、表面化していくということを描いています。この小説は1984年に書かれたようですが、武富士は2010年に会社更生法の申請をしております。作者はこの結末を予想していたんだろうなぁと思います。武富士の成長をあまり健全に描いておらず、自転車操業のように回り続けていないと、途端に倒れるくらいに厳しく描いています。
やはり、ビジネスマン小説の巨匠と言われる理由はあります。それに、出てくる人物をクールに描くよりも熱く描くので、読んでてやる気が出てきます。面白い。
高杉良を記事にしたのは、こういった面白い作品が中古で100円で売られているからです。
高杉良は早稲田大学中退の専門紙記者
高杉良は石油化学新聞の記者だったそうです。記者と言えば学力が高くないと就職出来ないイメージがあります。学生時代も早稲田大学中退ですが、やはり優秀な方なのでしょう。
石油化学新聞社では編集長まで務めたそうですので、仕事も出来た方だと思われます。
人事的な話になると急激に面白くなる
高杉良の物語は、結末に近付くにつれてストーリーに急激に引き込まれていきます。というのも、物語の4分の3くらいまでは、物語の点となる話を散りばめるだけなので、ストーリーの進み具合がゆっくりに感じるのですが、点が揃ったところで一気にそれらを繋ぎ合わせていくように描きますので、いきなり話がまとまりだすんです。
物語の点となる話は、物語のカギを握る人物の仕事ぶりや癖、人間関係を描写していく感じです。互いの確執や、事件、不正などが何かのきっかけで急に動き出すんですが、そのきっかけというか一石を投じるのがサラリーマンなので、読んでいて熱くなりますわ。
おすすめの作品
読んだ本はどれも面白かったので、基本的にはどれでも良いんじゃないかと思います。
ですが、やはり主人公が一般サラリーマンなのか経営者側なのかで面白さは違ってきます。自分が平社員なので主人公が一般サラリーマンの方が読んでいて面白いです。
あえて薦めますが、「乱気流」(上・下)が面白いです。
これは、日経新聞社の記者が主人公なのですが、丁度良い正義感の持ち主です。正義感の塊みたいな人物ではないので共感しやすいのです。巨大新聞社なので基本的にエリート社員しか出てきません。そんなエリート社員達がスクープをしたりされたりを繰り返しながら日々を過ごします。新聞社は企業を取材し不祥事をスクープするのが仕事である手前、自らの組織が公明正大でないといけないのですが、上層部はめっちゃ闇だらけ恥部だらけ。
これでは、新聞社として信頼が地に堕ちると日々憂いているわけです。ですが、たかだかイチサラリーマンでは幹部連中を変えることなんて出来やしない。
だけれども、上層部の不正と自らの勇気を突破口に社長辞任に向けて抵抗を見せる社員が現れます。もちろん、サラリーマンですからクビになるのは怖いでしょうが覚悟を決めたエリート社員はクビにされようが徹底抗戦するわけです。これが、周りを巻き込んで大きな動きとなるのかどうか・・・。
読んでいるとやる気が出てくる本
世の中には、裁判で懲戒解雇の無効を争っている事例をたまに見ますが、あれは覚悟を決めた社員が必死に何かを変えようと争っている一側面なんですよね。あれって、クビにしないでくれって叫んでいるのではなくて、経営者のやっていることは間違っていると訴え続けるためにクビにさせないようにしているだけなんですよね。
乱気流に限らず高杉良の作品は、人事は何のためにあるか、を描いているような気がします。ある時は、組織の活性化、ある時は組織の浄化、ある時は左遷。
そして、この人事に怯えるか、自分を貫くか、いろんな人の生き様が見えてきます。
自分は、偶に高杉良の作品を読む程度ですが、覚悟を決めた人間の強さ・潔さを見せつけられ勇気をもらいます。
そして、逆に汚いこと、小物がするようなことをしている幹部連中がいれば批判的な考えを持つ眼も与えてくれるように思います。また、自分の身をわきまえて物を言うことも大事だと痛感させられます。自分で言えば、健診機関で働いておきながら、メタボ体型では社員失格だなぁと改めて思わせてくださいます。やはり、健康診断を扱う立場でありながら自分の健康管理に無頓着ではダメですからね。
高杉良の作品を読んでいて思うことは、幹部連中に対して媚を売るような生き方は圧倒的につまらないということです。カッコイイ生き方をする人間を描いていますから、自分もこうありたいと感化されます。
ということで読んでいると登場人物にたくさんの刺激をもらえる良い本です。