医療保険不要論
今回は、保険について考えていこうと思います。
私は現在35歳ですが、この年齢になると多くの人がすでに何らかの保険に入っているかと思います。
将来何が起きるか分からないし、万が一の時でも資金が潤沢にない限りは、保険は必要なものだと思います。
しかし、保険のなかでも、医療保険については不要だという主張を持つ人がそこそこいるような印象を受けます。逆に、絶対に重要な保険だという人はあまり見かけません。
本当に、医療保険は不要なのでしょうか。
今回は、医療保険の必要性について考えていこうと思います。
※私は、FPでも保険募集人でもありません。
医療保険不要の主張
医療保険は不要だとする意見は以下のようなものがあります。
- 高額療養費制度という健康保険の制度により負担する医療費には上限があるから
- そもそも3割負担であるから、仮に医療保険に入っていなくても貯蓄から賄える場合が多い
- 今は入院ではなく通院での治療がメインになっている
- 実際に支払う総額に対して給付を受ける金額を比較するとバランスが悪い
- 必要な保障は、実は医療保険ではなく収入保障やがん保険など別の保険である
といった理由が見つかります。
個人的にはすべての意見に納得してしまいます。
では、逆に医療保険が必要だという主張はどうでしょうか。
医療保険必要の主張
医療保険は必要だとする意見は以下のようなものがあります。
- 入院すると家計が困窮することを回避できる(現在の貯蓄不足のリスクを回避)
- 先進医療も視野に入れることが出来て、治療の選択肢が増える
- 高齢になってから安心できる
といったものが見つかります。
どれも一理あります。
医療保険が必要であるか吟味する
今回、医療保険が不要であるというのはあまり深堀しません。どれだけ不要であると理由付けられても、万が一の時に役立つ可能性があったり、これからの人生を有利に生きていく手段とできる可能性があるなら、不要論が正しいとしても入るべきだからです。保険というのは、必要性が一点でもあれば価値があるものだと思います。
入院すると家計が困窮することを回避できる
これは、高齢になってから安心できる、という主張と同じであると言えますよね。
字ヅラだけ見ると、入院すると家計が困窮することを回避できる、というのは貯蓄がない現役世代を指しています。高齢になってから安心できる、というのは高齢になって治療費が出せないという事態を回避できることを指しています。
つまり、医療保険に入っておけば、若くてお金がない時、年金生活になって収入が低下した時など人生のどのタイミングを切り取ってみてもある程度の医療を受けることが出来るということになりそうです。
医療保険はコスパや万が一に備えるのではなく健康づくりに有力なサービスと考える
医療保険不要の意見には、こういうものがあります。
医療保険の保険料は、トータルで100~200万円は払い込むことになるが、現実には入院するほどの治療に100~200万円も使う可能性は低い。
確かに、トータルで考えるとそうかもしれません。
しかし、潤沢な貯金がある状態を一生保てる保証はありません。
終身医療保険に30年間加入し毎月3000円を払い続けることが出来れば、いつ(たとえ年老いて貯金が0であっても、散在して貯金が0であっても)入院や手術が必要になってもその医療費は工面できる保障が終身医療保険だ言えます。つまり、まさに今自己資金が0円であっても医療保険に入ってれば病院に行けます。
しかし、社会人になって早々に200万円くらいの貯蓄を達成し、それをいざという時の医療費として使うと決めておけば終身医療保険は必要ないと言えます。言ってみればセルフ医療保険みたいな話です。例え病気になっても困ることはなく、貯金が減るだけです。
保険は万が一に備えるもので、もしその万が一が現実に起きた時は、人生最大の危機を救済してくれる強力な商品です。
そして、終身医療保険は万が一を救済すると言えるほどの力を発揮することが難しい保険といえるかもしれません。
そのため、医療保険に入っていて入院・手術してもせいぜい数十万円の保険金が給付されるだけであり、人生の危機を救ってくれるというには大げさな保障と言わざるを得ません。
もっと言えば、高額療養費制度が今の水準で保たれる限り、どんなに治療費がかさんでも自己負担は十数万円に収まるため、この十数万円を保険でカバーする必要性があると考えるかどうかです。
これらのことから、医療保険はコスパも総合的に見れば良くはなく(定期的に入院するほど安定して体調を崩さないと元は取れない)また、万が一の時の保障というには数十万円の保険金の給付であるため、大きな助けとなるかは微妙といった保険である、と言えます。
しかしながら、終身医療保険に入っておけば、入院や通院が必要になったとしても治療費の心配は一切しなくて良い権利が手に入る、というのは自分自身の健康を維持していくうえで大きなアドバンテージになるのではないかと思います。
例えば、がんは怖い病気の代表格ですが、がんは如何に早期発見するかが肝心要となります。早期発見するというのは、自覚症状が全くない段階でがん細胞を発見することですので、定期的な検診を受けることが絶対条件です。
このとき、医療保険に入っていれば、早期発見で生存する可能性を限りなく高めつつ、手術となれば、保険もご褒美程度に出ます。
つまり、医療保険に入っていれば、何かが見つかって手術や入院が必要になったとしてもお金はかからない、そういった考えで自分の健康維持のために積極的に検診を受けていくことが出来るのです。
何も保険には入っていない、けれどがんは早期発見したい。
医療保険には入っている、お金の心配もないからがんは絶対早く見つけるぞ。
自分としては、後者の方ががん検診を積極的に受けたくなるのではないかと思うのです。
入院や手術をすると保険金が出るため、がんを早期発見できてる人は医療保険に加入している人が多いのではないか。
これは、そういった統計データも見つからなかったのですが、人間の感情としては十分成り立つと思います。
健康診断やがん検診は、結果次第では保険において不可逆性の事実を作ってしまいます。
もし、がんと診断されたり、健康診断で異常を指摘されれば、保険加入時に告知義務によりその事実を告げないといけなくなり、場合によっては加入できなくなってしまいます。
定期的に検診を受けて悪いところは治せるうちに見つけたい、これは誰しもが考えることです。悪化した状態で見つかって、助かる可能性が小さく苦しみながら最後を迎える恐怖はどれほど大きいでしょうか。
医療保険というのは、病気の早期発見に専念するための有力なサービスになる、と言えるのではないかと思います。
万が一の保険にはなれない。けれど、万が一に至らない生き方を手助けする保険
医療保険について、このようにまとめてみました。
結局のところ、医療保険というのは入ってなくても大丈夫なんじゃない?と思われる保険です。
しかし、それは、万が一に備えるのが保険である、という考え方があるからです。
でも、よく考えてみると、病気における万が一というのは、自分の体について真摯に向き合わなかったがために起きてしまう可能性が高いのではないでしょうか。
例えば、毎年の健康診断で、血圧の高さを指摘される、肝機能の数値がわずかに高い、コレステロールが高い、血糖が高い、といった場合にしっかり向き合っている人はどれほどいるでしょうか。どこにも異常がなければ、急に死亡する可能性は限りなく低いはずです。
こういう小さな健康のほころびを放置してしまい、いずれ自覚症状が現れて、気が付けば万が一を恐れる事態になってしまうのではないでしょうか。
がん細胞もゼロの状態から1センチの大きさになるのには10年~15年という長い年月を要しますが、1センチの腫瘍が2センチになるのはわずか1年~2年だそうです。がん検診では、1センチ未満のがんを発見するのは困難だと言われています。そのため、毎年検診を受けて、1センチの腫瘍が2センチになる間に発見することで、たとえがんであっても完治を現実的なものにしていく必要があります。
自覚症状が出た時には、がんはすでに進行しています。
がんにしても、脳梗塞や心筋梗塞にしても、進行した状態になってしまえば、医療保険ではなく死亡保険や収入保障保険といった万が一の保険が頼りです。
ですが、そんな恐ろしい病気でも病巣が小さなうちに手を打てば、きっと大丈夫です。その段階で入院したり手術すれば完治の可能性が高まるでしょう。
医療保険は、自分の体の異常が小さいうちに健康な体を取り戻すための手助けをしてくれる保険なのではないでしょうか。
医療保険は必要と言うか有用
変な結論ですが、医療保険は必要というより有用だと考えます。自分の人生にとってプラスになるように医療保険を利用するという姿勢です。
医療保険に入らなくても、がん検診や人間ドックを毎年受けて治療すれば健康は維持できます。
でも、普通の金銭感覚であれば何か見つかって入院・手術になっても保険下りないしな・・・。と少し二の足を踏んでしまうのではないでしょうか。
ですが、30年や40年かけて100万円払えば、そういった心配もせず、存分に病気の早期発見に徹することが出来ます。まるで、早期発見できたご褒美と言わんばかりにささやかな保険がおりるのかもしれません。
積極的に、病気を早いうちから治すんだ、そういった姿勢で人生を健康的に生き抜くには、死亡保険でもなく収入保障保険でも、もしかしたらがん保険でもなく、医療保険なのではないでしょうか。